2012年11月
「第66回 日本臨床眼科学会」に参加してきました
平成24年10月26日(金)~28日(日)にかけて
国立京都国際会館にて開催されました。
今回のテーマは「確かな眼」です。
「確かな眼」を持つことは、患者様により良い眼科医療を提供するために大変重要なことです。
そういった意味からこのテーマが選ばれました。
たくさんの講義の中ら、多くのことを学ぶことができたので、
いくつかご紹介しますね。
1.糖尿病性網膜症について
糖尿病網膜症は、日本での中途失明原因の第2位です。
日本には現在、糖尿病網膜症の患者は、500万人いると言われおり、
そのうち視力に影響する網膜症患者は 180万人と報告されています。
発症率としては、
年間30人に1人が「網膜症なし」から「網膜症あり」に、
50人に1人が「軽症非増殖網膜症」から「重症非増殖網膜症または増殖網膜症」になっています。
<どんな症状?>
糖尿病網膜症は、初期の頃は、自覚症状がありません。
しかし、眼底を診ると、小さな出血がポツポツできてきているのです。
気づかない内に徐々に症状が進行し、眼底出血が増え、また黄斑浮腫が生じてくると
視力低下、変視症を認めるようになります。
さらに進行し、硝子体出血や広範囲な眼底出血を伴うと飛蚊症や急激な視力低下を示します。
新生血管緑内障に陥ると眼痛、不可逆的失明、眼球癆(眼球萎縮)を示すこともあります。
研究間のばらつきはありますが、血糖の厳格管理により
網膜症の発症を20%有意に低減させることができると言われています。
また、血糖の変動が大きいと網膜症の発症の危険性が高くなるようです。
内科にかかり、食事療法・運動療法をはじめ、薬物療法により
血糖コントロールをしていくことは勿論大切ですが、
それと同じくらい、眼科での管理がいかに大切かを
あらためて実感しました。
糖尿病のある方は、ご自身のために、
眼科にて定期的な検査を受けましょう!
2.糖尿病患者さんにおける白内障手術について
糖尿病を有する方の白内障手術後の合併症には、
・糖尿病黄斑浮腫
・後発白内障
・角膜浮腫
があります。 一つ一つ何故生じやすいのかみていきましょう。
<糖尿病黄班浮腫 >
白内障手術翌日、糖尿病患者さんの前房水中の
VEGF(血管内皮増殖因子)レベルは、術前に比較して
10倍高くなります。
その為、黄班浮腫が生じやすいのですが、
アバスチンを硝子体内に投与することで、黄班浮腫の悪化を抑制できるようになりました。
また、術後の視力改善も良くなりました。
<後発白内障 >
糖尿病患者では、 白内障手術後に前房収縮(後発白内障)が起こりやすい。
これは、術後の前房内炎症が高度にかつ遷延するからと言われています。
術後炎症をしっかり抑制することが、
術後の前房収縮を抑制する上で重要と考えられています。
<角膜浮腫 >
糖尿病患者さんは、術後の内皮細胞の減少しやすく、
また、術後に肥厚した角膜厚の回復が遷延する傾向にあります。
これは、角膜の予備機能が低下しており、 その上に
手術のストレスなどが加わるからだと考えられます。
当院でも、白内障手術を受ける患者様の中には、
糖尿病を患っている方が、しばしばいらっしゃいます。
手術前・手術中・手術後とより注意を払って
取り組んでおりますが、更に深く 勉強することができました
最後に・・・
学会を通じて、院内で日常業務だけでは知りえない新しい情報にふれることができ、
非常に有意義な3日間を過ごすことができました。
お休みの間、患者様にはご不便をおかけして申し訳ございませんでした。
この3日間で学んだことを院内のスタッフにもしっかりフィードバックし、これからの業務に活かし
ていきた いと思います。
尚、今回学んできたことは院内でご自由にご覧頂けます。
適切なレセプト作成法(レセプト作成のノウハウについて)
マイボーム腺機能不全に関して
近視について
糖尿病網膜症について
糖尿病患者における白内障手術に関して
視野検査について
スタッフ間での医療コミュニケーション
当院では白内障手術の手術前検査で使用している「ERG」という検査機械の使用方法
CL使用者が増えていることからケア用品の正しい使用方法や各ケア用品の細かい特性について
新商品のCLについて
来院の際には、是非ご覧下さい。
多焦点眼内レンズについてお話ししましょう。
眼内レンズには大きく分けて、2種類あります。
単焦点レンズと多焦点レンズです。
単焦点レンズは、1つの距離に焦点を合わせたレンズです。
その為、近方に焦点を合わせた場合、遠方用の眼鏡が必要になります。
反対に、遠方に焦点を合わせると、近方用の眼鏡が必要になります。
もう一つの多焦点レンズとは、簡単に言うと、
遠近両用眼鏡に似た働きをもつレンズのことです。
手術後の眼鏡の必要性が大幅に軽減します。
当院では、
アルコン社の『レストア』とAMO社の『リズーム』を
取り扱っています。
それぞれに特徴があるので、ご紹介しましょう。
レストアとリズームはどちらも多焦点眼内レンズですが、
その見え方の原理は異なっています。
レストアは回折型といわれ、
光を2つに振り分ける回折現象を利用して
光が焦点を結ぶ点を、近くと遠くの2つに振り分けています。
30cmぐらいの近い点と、5m以上の遠くの点の2つに
焦点がくっきりと合います。
このため書類を見たりする近方視が、
とりわけよく見えるとされています。
また瞳孔の大きさにあまり左右されないので、
高齢になっても遠近がよく見えます。
(一般に年齢が高くなると、瞳孔の大きさが小さくなります)
これに対してリズームは屈折型といわれ、
レンズの中心から外に向かって
遠く、近く、遠く、近く、遠くの5つのゾーンに
分かれています。
屈折型の特徴は光を遠近に振り分けないので、
遠くがくっきりと見えること、中間距離が見やすいこと
が挙げられます。
しかし、近くの見え方は瞳孔の大きさに左右され、
瞳孔があまり小さいと、近く用のゾーンが瞳孔で隠れてしまうために、
瞳孔の小さな高齢者では近くがやや見にくいと言われています。
白内障手術する際は、仕事や趣味のこと、
一日の生活においてどこを見ることが一番多いか等、
相談した上で、目の状態や生活に適した
眼内レンズを選択する必要があります。
多焦点眼内レンズは、まだ、保険適応でないため、自由診療になります。
高額なものになりますが、その価値は十分にあると思います。
全ての患者様に適応となるレンズではありませんが、
白内障手術を考えられる際には、検討されてみてはいかがでしょうか。
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